風邪

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風邪

「風邪」とは、正式な病名ではなく、ウイルス感染などにより、鼻や喉などの呼吸器に起きる急性の炎症を総称したものです。

年間を通じ、発症することがありますが、通常、一週間程度で自然に回復することがほとんどです。しかし、「風邪は万病の元」とも言われるように、呼吸器に持病がある方や、健康であっても体力が低下している方などは、症状が悪化して合併症を招くケースもあるため、日頃から予防を心がけるとともに、早期のケアで悪化させないことが大切です。

風邪とは?

風邪は、鼻から喉にかけての「上気道(じょうきどう)」という部分に起こる感染症を指し、正式には「かぜ症候群」と呼ばれます。ウイルスなどの病原体が、空気の通り道である上気道の粘膜にくっついて増殖することで発症し、悪化すると気管や気管支、肺などの「下気道(かきどう)」にまで炎症が及ぶ場合もあります。

おもな感染経路には、感染者のくしゃみや咳などの飛沫(ひまつ)を介して感染する「飛沫感染(ひまつかんせん)」と、病原体のついた手で口や目、鼻などを触ることで感染する「接触感染(せっしょくかんせん)」の二つがあり、5日程度の潜伏期間を経て発症するのが一般的です。

風邪の症状

風邪の初期症状は、鼻や喉の粘膜の乾燥・違和感(イガイガなど)といった症状から始まり、その後、少し遅れて喉の痛み、鼻水、鼻づまりが現れます。
鼻水は最初、さらさらとして水のような状態ですが、徐々に粘り気の強いドロッとした状態に変わっていくため、鼻が通らなくなり、鼻づまりになります。

軽症であれば、上気道(鼻と喉)の症状だけで治まることも多いですが、悪化して下気道(気管支や肺)に炎症が及ぶと、咳や痰(たん)などの症状が現れます。発熱や頭痛、倦怠感などを伴う場合もありますが、高熱が出ることは少ないのが特徴です。

患者さんにとってはどれも不快な症状ですが、実はこれらの症状は、私達の体に備わっている「免疫機能」の働きによるもので、体内に侵入した病原体を追い出そうとするために起こっています。ただし、風邪の症状はみんな同じではなく、患者さんの体調や体力によって異なるほか、病原体の種類によっても違いがあります。

風邪の原因

風邪の原因の多く(80~90%)はウイルス性で、残りの10%程度が細菌(肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラなど)によるものです。
ウイルスは、細菌の10分の1程度の大きさの微生物ですが、細菌とは違って自分自身で増殖できないため、他の生物の細胞を利用して増殖するのが大きな特徴です。

風邪の原因となるウイルスは約200種類もあると言われており、ウイルスの種類によって流行時期や症状にはそれぞれ特徴があります。
例えば、アデノウイルスやエンテロウイルスなどはおもに夏に流行し、強い喉の痛みと高熱が出るのが特徴です。夏場にお子さんを中心に流行する「プール熱(咽頭結膜熱)」もアデノウイルスによる夏風邪の一つです。
一方、低温で乾燥する冬の時期には、コロナウイルス(※新型コロナウイルスを除く)やRSウイルスなどが流行します。これらは、いわゆる「鼻風邪」と言われるもので、鼻や喉の症状が強く出るのが特徴です。

なお、私達が免疫力を持っているにもかかわらず、何度も繰り返し風邪をひくのは、一つのウイルスの中にもたくさんの型があるためで、抵抗力が弱い人や体力が低下した人ほど風邪をひく回数は多くなります。

風邪の検査と診断

風邪の原因となるウイルスの数が多く、それぞれを特定するのが難しいことから、通常、特別な検査などは行わず、現れる症状や経過などから診断を行います。
ただし、発症時期や症状から、インフルエンザが疑われる場合には、簡易キットを使った検査を行うほか、風邪以外の病気の疑いがある場合は、必要に応じて以下のような検査を行います。

  • 血液検査:体全体のコンディションを確認する
  • 細菌検査:尿や痰、血液などから細菌感染の有無を調べる
  • 画像検査:肺炎などの合併症が疑われる場合に胸部のレントゲン(X線)やCTなどを行う

風邪の治療

ウイルス性の風邪は、「抗菌薬(抗生物質)」では効果がありません。
風邪を早く治すための特効薬はなく、基本的には、水分と栄養をしっかり補給して安静にすることで自然に回復するのを待ちますが、鼻水や咳、喉の痛みなどの不快な症状を和らげるために対症療法を行います。

発熱も、体がウイルスと戦うために起きている反応で、無理に抑える必要はありませんが、高熱が続き、体力を消耗してしまう場合には、解熱剤を使用して熱を下げる必要があります。
また、症状がなかなか改善しない、もしくは徐々に悪化するようなケースは、別の細菌への二次感染が疑われるため、抗菌薬を使用する場合があります。

おもな治療薬の種類 効能
解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど) 発熱、頭痛などを和らげる
抗ヒスタミン薬 くしゃみや鼻水を緩和する
去痰(きょたん)薬 痰を取り除く
鎮咳(ちんがい)薬 咳を鎮める
抗菌薬(抗生物質) 細菌などの二次感染の疑いがある場合

※鼻水・鼻づまりの緩和に、鼻水の吸引やネブライザー(霧状の薬を吸入する)を行う場合もあります。

風邪の合併症とは?

通常、風邪は発症から一週間程度で回復しますが、呼吸器に持病がある方や、健康でも体力が落ちているような時には、症状が悪化するケースがあります。また、風邪をひいているうちに別の細菌に二次感染してしまい、合併症を起こす場合もあります。
特に、小さなお子さんや高齢者は、もともと抵抗力が弱く、合併症を起こす可能性も高くなります。体調の変化には十分注意し、気になる症状が現れた時は、できるだけ早く医師の診察を受けましょう。

中耳炎(ちゅうじえん)

ウイルスや細菌が、「中耳(鼓膜の内側)」に入り込み、炎症を起こします。耳の痛みや耳だれが出て、聞こえにくくなるのが特徴です。特に小さなお子さんは、中耳と咽頭をつなぐ「耳管(じかん)」が短く、中耳炎になりやすいので注意が必要です。

副鼻腔炎(ふくびくうえん)

ウイルスや細菌が、「副鼻腔(鼻の奥に広がる空間)」に入り込み、炎症を起こします。粘りのある黄色い鼻水と鼻づまりが大きな特徴です。また、喉の奥に落ちた鼻水で咳が出るほか、副鼻腔に溜まった膿で頭痛や顔面痛が起こり、発熱を伴う場合もあります。

扁桃炎(へんとうえん)

ウイルスや細菌が「扁桃(喉の入り口にあるアーモンド型のリンパ組織)」に入り込み、炎症を起こします。発症すると扁桃が腫れ上がり、食事が摂れないほどの痛みで高熱を伴います。

肺炎(はいえん)

ウイルスや細菌が肺に入り込み、炎症を起こします。高い熱が出て、激しい咳や呼吸困難を伴います。ただし、高齢の方ははっきりとした症状が分かりにくく、高熱が出ない場合もありますが、重症化すると命にかかわるため注意が必要です。

よくある質問

1)インフルエンザとの違いは何ですか?

インフルエンザは「インフルエンザウイルス」が原因で発症する感染症です。
風邪の場合、高熱が出ることは少ないですが、インフルエンザは、38度を超える急な発熱のほか、関節や筋肉の痛みなど全身症状が強く現れるのが特徴です。
ウイルス性で呼吸器症状を伴う点では風邪と同じですが、より重症化しやすく、治療法も大きく異なるため、一般的な風邪とは分けて考えられています。
インフルエンザは毎年、冬~春にかけて流行します。発症時期や症状、流行状況などからインフルエンザの可能性が考えられる場合には、簡易キットを用いた検査で判別を行います。

2)病院に行く目安はありますか?

風邪症状があっても、水分と栄養がしっかり摂れ、日が経つにつれて少しずつ症状が治まってくるようであれば受診の必要はありません。
しかし、小さなお子さんや高齢者のほか、喘息などの慢性呼吸器疾患やその他の基礎疾患(糖尿病、心疾患など)がある方は症状が進行しやすいので、早めに診察を受けることをおすすめします。
また、39℃を超える熱が何日も続く時や、症状がなかなか改善しない、もしくは徐々に悪化しているような時には、風邪以外の病気の可能性もあるため、なるべく早く受診するようにしましょう。

3)風邪をひいた時に気を付けることはありますか?

風邪は、早期のケアで、こじらせないことが大切です。
忙しい時は「たかが風邪くらい」と思って、ついつい無理をしてしまいがちですが、症状が悪化すると治りが遅くなるだけでなく、体力を消耗してほかの細菌に二次感染するリスクも高くなります。
ウイルスと戦うための体力を回復させるためにも、十分な水分と消化の良い食事を摂って、早めに休養を取るようにしましょう。

4)風邪の予防法はありますか?

私達は、普段からたくさんのウイルスや細菌に囲まれており、睡眠不足や過労、ストレスなどで体調を崩すと、抵抗力が落ちて体内に病原体が侵入しやすくなります。
日頃からバランスの良い食事や十分な睡眠を心がけるなど、規則正しい生活で病原体を寄せ付けないように体調を整えておきましょう。
風邪の流行する時期には人混みを避けるほか、外出時にはマスクを着用することで、感染を予防することができます。また、ウイルスなどの病原体は、手を介して体内に入ることが多いため、普段から丁寧な「手洗い」を習慣にするようにしましょう。

まとめ

風邪はウイルスなので、抗生剤は効きません。抗生剤は、いい菌も殺してしまうので、下痢を起こすこともあります。(慢性疾患があるときや症状が重いとき、長引くときは、使用します。)
また、きちんと服用しないで途中で服用を止めると、耐性菌がついてしまい効かなくなってしまうので、「ここぞ」という時に使用して最後まで飲みきることが大事です。

当院では、安易に抗生剤は使用せず、基本的に対症療法(症状に対する治療)を行なっています。
あとは、水分をこまめに取り、ゆっくり家で過ごし、温かい消化の良い食事を取るなど、実際に水分や食事の例を出して詳しく説明するようにしています。