花粉症

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花粉症

「花粉症」は、スギやヒノキなど、特定の植物の花粉が原因でアレルギー症状を起こす病気です。
毎年、花粉が飛び始める時期に合わせて、鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどのつらい症状が現れ、仕事や勉強などの日常生活に大きな支障をきたします。

日本人のおよそ4人に1人は花粉症とも言われており、その患者数は年々増加しています。
一旦、症状が出てしまうと、毎年、アレルギー症状に悩まされますが、適切な治療を行うことで、不快な症状を軽減し、コントロールすることは可能ですので、つらい花粉症にお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。

花粉症とは?

花粉症とは、スギなどの花粉(異物)を鼻から吸い込んだり、目に入ったりすることで起きるアレルギー症状の総称です。
「ダニ」や「ハウスダスト」といった年間を通して症状が出る「通年性アレルギー」とは異なり、原因となる花粉が飛散する時期にだけ症状が起きることから「季節性アレルギー」とも言われ、花粉の飛散量が多い年は特に強い症状が出るのが特徴です。

日本人の場合、スギによる花粉症が多く見られますが、最近では、複数の花粉にアレルギーを持つ方や、通年性アレルギーと両方に悩まれる方が増えているほか、これまでは少ないとされていた小さなお子さんの発症も増えてきています。

≪花粉症セルフチェック≫

  • 透明で水のようなサラサラの鼻水が止まらない
  • くしゃみが立て続けに出る
  • 目のかゆみがあり、涙目、充血などの症状が出る
  • 鼻詰まりがひどく、においや味が分かりにくい
  • 鼻や目の症状で頭がぼーっとする、集中力が続かない
  • のどのイガイガ、口の中がかゆい
  • 肌のかゆみや肌荒れが治らない

花粉症発症のメカニズム

私たちの身体には、自分の身体の成分と違う「異物」が入ってくると、攻撃して体外に排出しようとするしくみがあります。このしくみは「免疫反応」と言われるもので、本来は身体を守るために備わった正常な働きですが、異物に対する免疫反応が過剰になりすぎてしまい、自分自身の身体にまで害が及んでしまうようなケースを「アレルギー」と言います。

花粉症の場合、目や鼻から「異物」である花粉(抗原、アレルゲン)が侵入すると、身体の免疫システムが作動して、体内には花粉に対抗するための「IgE抗体」という抗体が作られます。
その後、数年~数十年かけて花粉を浴び続け、体内のIgE抗体が一定量に達すると、その次に花粉が入ってきたタイミングで、炎症反応を起こす化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサン)が分泌されるようになり、くしゃみや鼻水、涙などを通して花粉を外に排出しようとするのです。

これが、花粉症発症のメカニズムであり、症状の程度には個人差がありますが、花粉に対する反応が強ければ強いほど症状も強く出るため、集中力の低下やイライラ、不眠などを伴い、日常生活に支障をきたすようになります。

花粉症の症状

花粉症は、おもに鼻と目に不快な症状が現われます。
毎年同じ時期に症状が現れ、花粉が飛散している間中続くのが特徴です。

鼻の症状

鼻の三大症状は、「くしゃみ、鼻水、鼻詰まり」です。
患者さんにより、くしゃみや鼻水の症状が強い「鼻漏(びろう)型」と、鼻の通りが悪くなる「鼻閉(びへい)型」に分けられますが、その両方を伴うタイプの方もいらっしゃいます。

鼻漏型

何度も立て続けにくしゃみが出て、鼻水が止まらなくなるタイプです。
涙とほぼ同じ成分である花粉症の鼻水は、風邪の鼻水のような黄色っぽい粘りはなく、無色透明で、さらさらしているのが特徴です。鼻をこすったり、かみすぎたりすると、鼻の粘膜に傷がつき、鼻出血が起こる場合もありますので注意が必要です。

鼻閉型

炎症により、鼻の中の粘膜が腫れて空気の通り道が狭くなり、鼻詰まりになるタイプです。
鼻が通らなくなると口で呼吸するようになるので、口の乾き、咳などの症状が出るほか、においが分からなくなったり(嗅覚障害)、食べ物の味が分かりにくくなったりする(味覚障害)ケースもあります。

目の症状

花粉による目の三大症状は、「目のかゆみ、充血、涙目」です。
目の表面に付着した花粉が原因で炎症が起きると、結膜炎を発症し、強いかゆみが起こります。
充血、目のゴロゴロ感、大量の目やになどの症状も伴うほか、目に入った異物(花粉)を洗い流そうとして、大量の涙が出ます。

※このような鼻や目の症状に伴い、患者さんによっては、頭痛や倦怠感、微熱、口や喉の違和感、皮膚のかゆみ、肌荒れ、イライラ、不眠といった全身症状が出るケースもあります。

花粉症の原因となる植物

花粉症の原因になる植物は60種類以上あります。
中でも日本人に多いのは「スギ花粉症」で、国内の花粉症患者全体の約70%を占めています。
そのほかにもヒノキやブタクサ、ハンノキなど、さまざまな植物がアレルギーの原因となりますが、花粉の飛散時期はそれぞれ異なることから、ほぼ一年中、何かしらの花粉が飛んでいるということになります。

花粉症の検査と診断

花粉症の診断には、患者さんから詳しいお話を伺うとともに(症状の程度や発症時期、アレルギーの有無、家族歴などの確認など)、以下のような検査を行います。

鼻鏡検査(びきょうけんさ)

鼻鏡(びきょう)という鼻の中を覗く器具で、鼻腔内の状態を確認します。
花粉症の場合には、鼻腔内に水っぽい鼻水が見られ、炎症で鼻の粘膜が赤くなっている場合が多いです。

血液検査(特異的IgE抗体検査)

血液中にあるIgE抗体を測定する検査で、「RAST(ラスト)法」とも呼ばれます。
IgE抗体は、花粉やダニ、ハウスダストなど、それぞれのアレルゲンによって型が異なるため、血液中にある花粉に反応するIgE抗体の有無を調べることで、花粉症の特定が可能です。
RAST法では、抗体の数値によって0~6の7段階のクラスに分類します。一般的には数値が高くなればなるほど、アレルギー反応が強く出ているということが分かります。

花粉症の治療

つらい花粉症の緩和には、薬物療法を行います。
残念ながら、内服薬だけで花粉症を根本的に治すことはできませんが、これらの薬剤を上手に使い分けることで、花粉の飛散する時期であっても、約半数の患者さんは、ほぼ無症状で過ごすことが可能になります。

おもな花粉症治療薬の種類

  • 抗ヒスタミン薬……炎症反応を起こす化学伝達物質「ヒスタミン」の働きを抑える
  • ケミカルメディエーター遊離抑制薬……化学伝達物質を放出する肥満細胞の働きを抑制する
  • 抗ロイコトリエン薬……炎症反応を起こす化学伝達物質「ロイコトリエン」の働きを抑える
  • 鼻噴霧用ステロイド薬……炎症を鎮め、アレルギー反応を抑える
  • 点鼻用血管収縮薬……鼻粘膜の血管を収縮させて鼻詰まりを改善する
  • 経口ステロイド薬……炎症を鎮め、アレルギー反応を抑える

さらに通院時には、細かい霧状の薬剤を吸い込む「ネブライザー治療」も併行して行うことで、鼻水や鼻詰まりの改善効果を高めることが可能です。

なお治療は、花粉が飛び始める前から治療を開始する「初期療法」が非常に有効だということが分かっています。本格的な花粉シーズンの到来に備え、早めに治療を開始されることをおすすめします。

花粉症のセルフケア

花粉症の改善には、身の回りに花粉を寄せ付けないようにすることも忘れてはいけません。
セルフケアだけで花粉症を完全に抑えることは難しいですが、患者さんご本人の毎日の心がけや生活習慣を見直すことで、症状を軽減することは可能です。
花粉が飛散する時期は、テレビやインターネットなどで花粉の飛散情報をこまめにチェックし、以下のような点に気を付けて生活しましょう。

外出時のマスクやメガネの着用

ドラッグストアには、花粉症のマスクやメガネ(ゴーグル)などが、多数販売されています。
花粉症用マスクは体内に侵入する花粉を約1/6に抑え、花粉症用メガネも約1/4にまで抑える効果があると言われています。外出時には目や鼻からの花粉の侵入を防ぐため、マスクやメガネなどの対策を忘れずに行いましょう。

花粉の飛散量が多い時は外出を控える

花粉は晴れていて、風の強い日に多く飛びます。また、一日の中でも花粉の飛散量は、13~15時頃がピークになります。このような条件に当てはまる日や時間帯はなるべく外出を控え、やむを得ず外出する際は、マスクなどで対策をしっかり行いましょう。

室内に花粉を持ち込まない

帰宅時は、髪の毛や服に付着した花粉を持ち込まないよう、玄関の外で丁寧に払い落しましょう。また、手洗いやうがい、洗顔などで体に付着した花粉を落とすことも大切です。(服や体のほか、ペットなどにくっついて持ち帰ってしまうこともあるので注意が必要です。)
また、花粉の飛散時期は、窓やドアを開けっぱなしにするのは避け、洗濯物や布団などを室内に取り込む際も花粉をよく払ってからにしましょう。

花粉の付きにくい洋服の素材を選ぶ

羊毛などの表面がでこぼこした素材は、花粉が付きやすくなるので避けましょう。
コートなどは、花粉を払い落としやすい、表面がツルツルしているような素材がおすすめです。

部屋を清潔に保つ

花粉によるアレルギー症状が出ている時は、鼻や目がとても過敏になっています。
このような状態の時は、ダニやハウスダストなどの他のアレルゲンにも反応し、症状が出やすくなりますので、室内はこまめに掃除をして、常に清潔な状態を保ちましょう。空気清浄機の使用も効果的です。

規則正しい生活を心がける

過労や精神的ストレスは、アレルギー症状を悪化させます。
日頃から、バランスの良い食事と十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心がけましょう。
おしゃべりやカラオケなど好きなことをして適度にストレスを発散することも大切ですが、お酒やタバコは症状悪化につながるため、できるだけ控えるようにしましょう。
軽い運動などは、ストレス発散にも効果的で、おすすめですが、屋外で行う時には、しっかり花粉対策をしましょう。

よくある質問

1)日本の花粉症患者はなぜ増えているのですか?

日本人に花粉症が増えているのは、戦後に植えられたスギやヒノキが大きく成長し、飛散する花粉量が増えたことが関係していると言われています。今後は、世界的にも地球温暖化の傾向が続くことから、ますます花粉の飛散量は増加すると予想されています。
さらに、住宅環境の変化や、現代人に多く見られる高脂肪・高カロリーの食生活、ストレスの多い生活などもアレルギーを起こしやすくする要因と考えられています。

2)花粉症の薬は眠くなりませんか?

従来、使用されていた「第一世代」の抗ヒスタミン剤薬は、強い眠気や口の渇きといった副作用があり、使用をためらわれる方もいらっしゃいましたが、現在は、改良が進み、眠気の出にくい「第二世代」の薬剤が主流となっています。
ただし、作用の仕方には個人差もあるため、服用中している時は、危険な作業(車の運転や高所作業など)は控えましょう。

3)花粉症か風邪か見分けがつきません……。

花粉症のくしゃみ、鼻水、鼻詰まりといった症状は、風邪の初期症状とよく似ていますが、ウイルス感染が原因の風邪とは発症のメカニズムが全く違い、比較すると症状にも若干違いがあります。
まず、花粉症の鼻水は、さらっとした水のような状態が続くのに対し、風邪の鼻水は、徐々に粘りが出て黄色い鼻水に変化します。
また、花粉症には「モーニングアタック」と言われ、朝方、症状が強まる傾向がありますが、風邪の場合、一日の中で症状は変わることはありません。
さらに、一般的な風邪であれば一週間程度で完治しますが、花粉症の場合は花粉が飛んでいる間は症状が続きます。

4)薬物療法以外の治療にはどんなものがありますか?

当院は薬物療法をメインに治療を行っていますが、耳鼻咽喉科などでは、重症の花粉症に対し、レーザー手術(鼻の粘膜の一部を焼く)を行う場合もあります。
また最近では、花粉(アレルゲン)を少量ずつ摂取する「減感作(げんかんさ)療法」を行っているところもあります。摂取量を徐々に増やしていくことで、それに対する過敏な反応を減らすことを目的としています。減感作療法は、花粉症を根治させる唯一の治療法と言われていますが、症状の改善には長い時間(最低でも2~3年程度)が必要です。

まとめ

現在は一年中、何らかの花粉が飛んでおり、花粉症の重い症状(くしゃみ、鼻水、涙目、頭重感など)は、日常生活に影響を与えることもあります。
花粉症対策の基本は、原因となる花粉を知り、接触を避け、家の中に花粉を持ち込まないことです。また、毎年早めに治療を受けることにより、症状はだいぶ楽になります。上手な花粉症対策で毎日を乗り切りましょう。
抗アレルギー剤は、眠くなりやすい薬と、眠くなりにくい薬があります。当クリニックでは患者さんのお話を伺い、症状や仕事の内容(電車通勤、高所作業など)、車の運転の有無など、日常生活に考慮したお薬の処方をしております。