発症のメカニズム
心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力を「血圧」と言います。
心臓は、ポンプのように収縮と拡張を繰り返しながら全身に血液を送っており、心臓の動きに合わせて、血圧も上がったり下がったりを繰り返しています。
心臓が収縮して血液を送り出す時、動脈の血管には最も強い圧力がかかります。これを「収縮期血圧(最高血圧)」または「上の血圧」と言います。それに対し、心臓が拡張して動脈が元に戻った時の圧力を、「拡張期血圧(最低血圧)」または「下の血圧」と言います。
血圧は、環境の変化や運動など、さまざまな要因で変動しており、眠っている時は低く、日中、活動している時は上がるという具合に、一日の中でも変動するのは自然なことです。
しかし、高血圧になると、安静にしていても血圧値は常に高い状態が続き、下がらなくなってしまいます。
血管の壁には強い圧力がかかり続けるため、徐々に柔軟性が失われて動脈硬化を起こしやすくなり、心臓に大きな負担がかかります。
さらに脳や心臓、腎臓の合併症を起こすリスクも高くなるため、早期に血圧コントロールを行い、適正な値まで血圧を下げる必要があります。
(参考)左:心臓が収縮する様子 右:心臓が拡張する様子
高血圧の基準
日本高血圧学会の定めたガイドラインでは、「診察室で測定した収縮期血圧(最大血圧)が
140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上」の場合、高血圧と診断します。
ただし、診察室では、緊張などで若干高めな値になることが多いため、自宅で測定する場合は、
診察室よりも5mmHg低い基準(135/85mmHg)を用います。
高血圧は、下記の表の赤字部分で示したように軽症から重症までⅠ~Ⅲ度の3段階に分けられて
いますが、高血圧の手前である「高値血圧」であっても、リスクが高いと思われる場合は、治療が
必要になるケースもあります。
なお、孤立性収縮期高血圧というのは、収縮期の血圧だけが高くなってしまうタイプの高血圧で、
高齢で動脈硬化が進行している方に多く見られるのが特徴です。
高血圧の種類
高血圧には「本態性(ほんたいせい)高血圧」と「二次性高血圧」の二種類があります。
◆本態性高血圧……特別な病気がないにもかかわらず発症する
◆二次性高血圧……甲状腺や副腎の病気、睡眠時無呼吸症候群など特定の病気で発症する
二次性高血圧は、本態性高血圧に比べ、比較的若い人に多く見られるのが特徴です。
このタイプは、原因が特定されているため、まず元となる病気の治療を行うことが大切で、治療で病状が良くなれば、効果的に血圧を下げることが可能です。
それに対し、はっきりとした原因が特定できない本態性高血圧は、遺伝や体質、生活習慣など、さまざまな要因が関係して発症すると考えられています。日本人に多いタイプで、患者さん全体の8~9割を占めており、中高年以降に発症が増えるのが特徴です。